若葉、乾いた木
うま味★★☆☆ / 渋味★★☆☆
コク★★★★ / 火入れ★★☆☆
「東頭」の茶園は、標高800mを超える静岡・本山エリア、玉川地区にあります。ヒバと杉に囲まれた日本有数の高地に位置する茶園ですが、このお茶を群を抜いて特別な煎茶たらしめているのは決してその生育環境だけではありません。
まず、剪定を施さない“自然仕立て”のこの畑の収穫は年一回のみ。さらに、芽とその下にある一枚目二枚目の葉と、味わいに力強さを与える三枚目の茶葉を茎を入れないよう別々に手摘みすることで、上質かつ均一な葉のみを厳選することができ、わずか6秒の蒸し時間を実現しています。
最低でも30秒の蒸し時間が一般的な中、このようなごく短時間の蒸しは他に類を見ない技術で、天才茶師・築地勝美氏により開発され、2015年に若き小杉佳輝氏が引き継ぎました。「何も加えず、何も削らない」「特別なことはしないが、中途半端なこともしない」という理念のもと、この東頭の地が生み出す茶葉そのままの味わいを限りなく素直に引き出したお茶を作り続けています。この栽培・摘採・製造における極めてよく練られた特殊な条件こそが、玉川の天空を飾るこの煎茶に信じられないほどの力強さ、豊かな香り、そして完璧なバランスを与えているのです。
使用品種は「やぶきた」とわずかに入った「大棟」。その味わいは決してうま味の洪水ではなく、甘さと渋みの繊細なバランスがとれたとてもシンプルな美味しさです。木の香り、若葉の香り、フルーティーでありつつもほのかに花を感じさせる風味、力強さ、そして最後に無限の甘み…口の中での余韻は格別で、標準的な淹れ方であれば五煎六煎と煎がきくのも驚くべき点と言えるでしょう。また、熱湯を使った功夫式や氷出しなど、千通りと言ってよいほど様々な淹れ方に応えてくれます。
真に「格別」と呼ぶにふさわしい日本の煎茶があるとすれば、それはこの東頭でしょう。しかし必ずしも理解しやすいお茶とは言えません。じっくりと味わい、他の様々な煎茶を試していく中で、徐々に特質が浮き彫りになっていく、実に挑戦し甲斐のある煎茶です。
茶種: 普通蒸し煎茶
産地: 静岡県静岡市葵区玉川地区東頭
品種: やぶきた & おおむね
摘採: 2025年5月18~25日、手摘み
淹れ方のヒント
茶葉の量: 4-5 g
お湯の量: 70 ml
お湯の温度 : 60°C
浸出時間: 80秒