鷹取閑山氏の登り窯で焼かれた、龍のつまみが特徴的な宝瓶です。

岡山県において長い歴史を持つ備前焼は、日本六古窯の一つとして世界的に高い評価を得ています。今日でも様々な技法が用いられていますが、備前焼をつとに有名にしているのは、大型の穴窯や登り窯を用いた薪焼きです。製品は多岐にわたるものの、外観の美しさを脇に置き、お茶を淹れる道具としての機能面や技術面から見ると、常滑焼や萬古焼のそれに匹敵するような急須は存在しないのが実情です。
この空白を埋めるかのように、非常に高品質な備前焼急須の製作を始めたのが当時まだ若手作家であった小橋順明氏です。彼は香川大学教授で陶芸家の倉石文雄氏に師事したのち、故鷹取閑山氏に師事し、備前焼を学びました。

小橋氏の急須は薄く軽く精緻で、倉石氏から受け継がれた職人技である、非常に緻密な茶漉しを備えています。彼が大きな登り窯で年に一度、数十個ほどしか急須を作らないことを考えると、この品質はさらに驚くべきものであると言えるでしょう。

こちらの作品は宝瓶のため茶漉しはついていませんが、彼の精緻なものを作る腕が、生き生きとした龍のつまみの造形に存分に生かされています。また、注ぐ際のお茶の流れ方がやわらかく美しく、裏漏りせずに気持ちよく切れるのも特筆すべき点です。とっておきの玉露や手揉み茶に使いたい逸品です。

注意：こちらの宝瓶は、90℃以上のお湯を直接注がないよう作家により推奨されています。ご注意ください。