日本の古くからある伝統的な地方の番茶は実に様々で、地方の文化に基づいた方法で利用されています。富山県の朝日町(正確には和紙作りでも知られる蛭谷)は日本海に面し、バタバタ茶と呼ばれる後発酵茶、黒茶をのみ続けています。
この黒茶は夏の葉から作られます。刈り取った葉を蒸して軽く揉んだ後、葉を室に入れて後発酵させます。発酵が進むと室の中の温度が上がるので、温度調整のために茶葉を混ぜ合わせ、室を分解して茶葉を詰めなおし、発酵を調整します。この作業を10回ほど繰り返します。最後に葉を日陰で半日乾かしてから、さらに天日で2,3日乾かします。
このバタバタ茶は平安時代から蛭谷(びるだん)村で飲まれていると考えられていますが、歴史上に最初に現れるのは1472年です。蓮如上人がバタバタ茶の風習のあるこの地域で布教するおりに利用したとされます。このお茶は蛭谷の仏教儀式に用いられ、様々な機会にお客をおもてなしするお茶として伝えられています。初めの一杯は仏壇に捧げ、残りは仲間内で飲みます。茶碗に入れて塩を少し加え、「夫婦茶筅」とも呼ばれる2つの茶筅がくっついた竹でできた大きな茶筅を使って泡立てます。
きのこやかび、そしてワックスを塗った木や革も彷彿とさせる、発酵による香ばしい香りにまず驚かされます。特に煮出すときにしっかりと淹れると、バターやじゃがいも、炊いたご飯といった意外な香りもします。口に含んだ時に感じるのはきのことワックスを塗った木の香りですが、後口ではバター風味の甘い印象が余韻にしっかりと表れてきます。
たっぷりのお湯で煮出すとこのお茶の香りをしっかりと一番良く引き出せますが、幾分苦みが出るので分量と煮出す時間に気をつけてください。また、たっぷりの茶葉とお湯で何煎も淹れることをお薦めします。塩ひとつまみを茶碗に入れて夫婦茶筅で泡立てる伝統的な飲み方を是非お試しください。
一日を通して、手軽にたくさん飲める番茶です。夏場は冷やしてもおいしく飲めます
淹れ方のヒント
茶葉の量: 3g
お湯の量 : 70ml
お湯の温度 : 100°C
浸出時間 : 60s
茶種 : 後発酵茶
産地 : 富山県下新川郡朝日町